私はみかん農家の3代目、子供の頃の正月前とろけるような完熟みかんの味・・・非常に美味かった記憶があります。
ここ30年天草のみかんがまずくなった、といわれています、その原因のひとつに、昭和30年後半より、「生めよ増せよ政策」の中、質より量を追い続けた栽培方法が大きな要因だと考えます。
15年ほど前、共同出荷から外れて、味追求への道へ・・
品種も子供の頃の味、「宮川早生」。植栽してから今年で8年目になります、3年前の年秋、マルチも張り、フィガロンを散布し美味いみかんが収穫できた、・・しかし昔の味には程遠い出来・・・。
親父の時代と比べ、さらにみかんを理解し、ハイテク技術まで使ったのに、なぜ?・・
ここから始まった海水の利用・・
今と昔、昔使って今は使わないもの、それは海藻だけ、子供の頃、強い北風が吹いた後、海岸へ出かけ海藻集めに良く駆り出されました、生のままの海藻をみかん山へ運び、根っこの周りに厚く広げた経験があります。現代では経営規模拡大により、昔の真似は出来ませんが、今は海藻に変わるものとしてミネラル肥料があります、海藻から抽出した製品、海藻を粉末にした製品と色々です、しかし高価で大量に土壌に使えるものではありません。
では、ミネラルって何だろう・・・と考えますと海水そのものがミネラル・・・こんな訳で、海水散布を考えた次第です。
塩水と言えば、真っ先に心配するのが塩害です。海に囲まれた天草は、台風進路が九州の東沿岸を北上した時、雨の無い「風台風」になり、強い北風と、西風が吹きます。有明海、東シナ海に面したところでは、海岸から打ちあがった波しぶきが潮の雨として降り注ぎます。そして2日目ごろから海岸線の木々の葉は赤く変色し、やがて落葉してしまいます。
これが天草での「塩害」です。
この課題をクリアするまで、構想から実行まで2年要してしまいました。
海水散布への決断のきっかけの一つは、昨年の「現代農業8月号です、中でも、「キューイフルーツ」と「トマトの海水水耕栽培試験」は強烈でした」。
そしてもう一つのきっかけは、海岸から3メートルの所で、友人がみかんを作っています、ここのみかんは、いつも美味しいみかんが出来、県の果実品評会でいつも入賞しており、友人自慢の園でした、(今は5年前の台風18号による大波で、海から打ち上げられた大きな石で埋め尽くされ、廃園になっていました。)
この2つのデーターを基に、昨年夏やっと海水散布に踏み切った次第です。
海水・・一般的に考えて、木が枯れる。
しかし一寸考えて見ましょう、海岸から3メートルの園・・・防風対策はしっかりしていますが、風台風の時は大波が堤防で砕け、園内に大雨の様に降り注ぎます。・・・それでも、みかんが枯れない現実。
ではどうして風台風で、海岸の木々の葉が枯れるのか?・・・。
人間に例えて考えますと、手に小さな切り傷をいっぱい付けて、海水の中に手を浸けるとヒリヒリします、もし全身切傷だらけで海水に浸り、甲羅干し・・・、これを一日中繰り返したらどうでしょう・・たぶん想像を絶する苦痛のはずです。
風台風の時の海岸近くの木々の葉は、葉同士が擦れ合い全身傷だらけの身で、長時間海水を浴びた状態です、枯れるのが当然でしょう。
海水散布を行うにあたり、以上の事を自分で理解するまで調べ、失敗する事も自分で納得し、踏み切った次第です。私が行った方法は、昨年の8月末、連日35度を越す猛暑の中、海水原液を10e当たり1千g土壌全面散布(同時に下枝にも葉面散布)・・・
目標としては全園1千g散布でしたが、7百g区、5百g区、3百g区、の土壌散布。
早生みかんにつきましては15倍に希釈した海水を葉面散布、百g/反程度。
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原液の散布で、目に見える散布経過は、散布後約2週間の猛暑の中、二日目には葉っぱ、果実に塩の結晶が出来かなり心配しましたが、なんともなく次の雨までそのままでした。
草につきましては、散布後2日目から枯れ始め3日程でほとんど枯れてしまいます。
15倍希釈液葉面散布のほうは、ベタベタ状に散布跡が残り、塩の結晶までは出来ませんでした。
海水の葉面散布の目的は、みかんの木樹体へのストレスを与えることです、ストレスとはどんなものか・・・簡単に説明すると、木をイジメて、衰弱させること、例を挙げますと・干ばつ・フィガロンの散布・肥料切れ・断根などです。
この方法はすべて糖度を上げる効果があります、風台風による塩害・・これもひとつのストレスでは?・・・そう考えての海水の葉面散布でした。
結果は、昨年を見る限りでは、葉色は濃くなり期待と逆の結果が出てしまったようです。<BR>
昨年だけの観察ではなんとも言えませんが、塩水の掛かった状態で連日35度近い猛暑の中を2週間・・これより過酷な環境での試験は無い!と言えるほどの条件下、
この環境で弱るどころか、益々勢いづくみかんの木々たち、当初の目的は達せられませんでしたが、しかし、これが新しい構想へと夢が膨らむきっかけになってしまいました。
海水を使った、樹体回復、及びミネラルの補給、目的は、発芽時期の生育ポイントでの海水使用です。(散布の時期は人間の母体を例に決定しました)
早生みかんは、収穫後と3月中旬に、1千g/反の土壌散布。
ジューシー園・デコポン園は春先に、ミネラル補給と、春草の処理を狙って。
春先の海水散布が、どのような効果として出ているのかまだ不明ですが、昨年までの我が家の園、今年の近所の園の状態と比較して、違うところは、デコポンの奇形果実が非常に少ない事と、春先の天候不順で全般的に生理落果が多い中、我が家のデコポンは、実どまりが非常に多いようです。
ジューシーオレンジにつきましても、5〜7月収穫しております都合上、肥料切れのピークを、春先に設けております。そのため花が肥料不足のため落花してしまい、1年おきの収穫しか出来ません。
それが今年は豊作年とまでは行きませんが、裏年にもかかわらず品質を維持できるほどの収量はありそうです。
ただ、今年の結果が、海水によるミネラル補給の効果なのか、それとも偶然なのか、ちゃんとした結果が出るのは数年の試験と観察が必要です。
もうひとつの春草の処理は、見事失敗しました、気温が低く呼吸作用が少ないためでしょうか、全く枯れません。
雑草目的にも使うなら、やはり夏の高温期がベスト??昨年は300g/反でほとんどの草は枯れています、
しかし今年は枯れません・・・・・。枯れないので昨年の3倍の海水を、草の葉っぱに穴が開くような墳圧で散布を試みましたが昨年のようにまるで除草剤をまいたかの様な枯れ方はしませんでした。
多分海水の栄養でバランスのいい草の状態だと考えられます
先日四国の友人と話しました折、愛媛大学が以前「海水のみかんへの利用」を試験しているとか、結果は塩害が出て辞めた、と聞いております。海水利用はまだ未知の栽培方法です。
もし利用されるのでしたら、50倍〜500倍の世界での使用をお勧めします、ミネラル肥料を薬剤散布時に混用して葉面散布するとご理解いただいたほうが適切かと考えます、それでも十分の効果は得られるはずです。
私の原液散布は、ストレス効果を第一に置いての散布試験と除草効果を狙ったことをお忘れなく、
植物とミネラル、どうゆう関係があるのか、
自宅近くの海岸で野草を調べてみました、春先5月、結構北風が強い日があります。波打ち際、ちょっと風が吹けば潮で根っこまで洗い流されそうな場所で咲く「ハマエンドウ」の花、畑に咲く「スズメノエンドウ」より大型で、とても分厚い葉っぱを持っています、
また天草西海岸へ行きますと、波打ち際まで「クズ」のカヅラが這っている所があります、その花は大きく色鮮やかです、海岸という苛酷な環境でそうなったのか・海水のミネラルが効いてなのか・・ミネラルの効果???。
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植物も動物もすべて太古の昔海の中で生まれ、高度に進化した動物たちは今なお体の中に海を持っています。
母親の子供を育む羊水、この成分は海水を3分の1に薄めた成分とほぼ同じといわれています、また母乳や血液もほぼ同じだそうです。動物はミネラル無しでは生きていけないようです。
では植物は・・・と聞かれた時、まだ皆さんに話せるだけの知識はありません、
畑にはミネラルがあるのか?・・・あると思います、では山には?・・・もっといっぱいあると思います。
何故?・・・山を開墾してみかんの木を植栽したときは、恐ろしいように大きくなりますが、改植した園に苗木を植えてもなかなか大きくなりません・・・原因はミネラルだと思います。
では山のミネラルとは何?・・・多分太古の昔から積もり積った木々の腐植の中にあるのでは?・・・。
以上私の偏見で、海水散布について述べさせていただきましたが、海水の使用方法は、
決して原水散布ではないと思います。<BR>
使用時期、使用濃度、散布量、すべて不明です。
ただ今回の私の経験は、原水の濃度でもみかんの木は枯れない事実を皆さんにお伝えして今後の海水散布の開拓に少しでもお役に立てればと・・・・。
天草市有明町小島子 井上博康
海水散布のまとめ (2003年作成)